今回のは(いつものことだとも言えるが)はじめに書こうと思っていたもの、はじめはそう書いているつもりだったものと実際書き上がったものが相当違ったと思う。それは言い換えると、書こうとするものや書きつつあるものに先にイメージを持っていたということだ。この点はあきらかに予定外だった。イメージをぎりぎりまで排除することなしにこの書き方は成立しない。そこで読み返してあきらかにイメージ(無意識にもちこんだ、貧しい)に寄りかかった部分を全部捨てて、強い部分を「編集」して自分の知らない流れを発見しなおすという方向に切り替えたのだが、ぎりぎりでこの切り替えがやれるくらいにはイメージの排除はできていると思う。
とはいえ自分が出所になってる言葉を「編集」するのはしんどいのでできればやりたくない。「編集」不要の文章にならなかった理由を考えるに、冒頭に原因があったと思う。トラブルで原稿が消えてしまう前からあった冒頭をそのまま使った(最終的には書き換えた)のだが、それはそれで強い冒頭だったけど言葉よりややイメージを(書き手である私に)喚起する文章になっていたと思う。そこから書き始めるかぎりどうしてもイメージに引きずられる。
あと、主人公にとっての「他者」がすみやかに登場すべきだと思った。これは残雪をずっと読み返していて気づいたことだ。夢系の小説が一定以上の長さを持続する強さというのは「他者」の強さに依るのかもしれない。