夢=外傷系の小説に関しては今回やれたという手応えを得られたことで今後への不安は激減した(と思う)。
そこでもう一方の無職=宿命系の小説、つまり私の守備範囲内(仮)におけるストーリー部門にこれからは手を出してみてもいいのではないかという気がしている。
「外傷」は「宿命」へと置き換え可能なものだ。スタート地点をゴール地点にひっくり返すだけである。それだけで小説の言葉は顔の向きが正反対になる。部分だけ見ればほとんど同じような動きを見せていても、小説というのはスタートからゴールに向かう一方通行のものなので両者は併存できないのである。


ストーリーといっても、ミステリのようなものは自分には書けない。結末から逆算されて言葉の動きが細かく制限されるようなものは書けないのだが、「外傷」が反転した「宿命」的なものは、細部がかなり自由に動かせるとともにフレームとして作品全体をひとつのアイコンのようなものに収めてもくれるはずだと思う。
のがれられない結論に向けて運命の歯車が回るようなストーリーということになる。
ストーリーというのは全部そういうものだといえなくもないが、その結論が読者から隠されてるタイプのストーリーは、結論を見誤らせるためのニセの道筋を読者に正確にたどらせなければならない、という不自由さがある、と大雑把にいうことができる。
逃れられない結論、宿命、というものを読者と共有しないとストーリーで細部の自由は確保できないのである。