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幽霊の怖さは、人がそこに「いる」ことと「いない」ことの間から生じてくると思う。人が「いる」とは、その人を見ることも触れることもでき、私と同じ内面を彼が持つことも信じられる状態だ。そのいずれかを欠いた時、彼は十全に「いる」とは言えなくなる。だが何かひとつでも残れば「いない」とも言い切れない。見えるけれど触れられない。触れるけど内面がない。こうした存在を前にした不安定な心がひとまず幽霊を恐れる土台となる。