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いわゆる死後の世界はないけれど死後も世界はある。それは生前の世界と同じで私だけがいないこの世界のことだが、人生的な時間の両端であるそれら生前と死後を、空間に置き換えるといわゆるあの世になる。私が現実に不可能でも想像的な可能性として自由に移動してそこにいることが考えられない、のっぴきならない断絶をはさんだ向こうをわれわれはあの世と呼ぶ。いわば私の死後の世界を現在に先取りしたものなのだが、そこをまだ生きている私のかわりに現在すでに死んでいる者の住む世界に読み換えたのが、あの世である。