私の書く小説、というより今後書いていこうとする小説には大きく分けて二つの系統があると思う。内田百間的な「夢小説」の系統と、ボリス・ヴィアン的かつP.K.ディック的な「無職小説」の系統。あくまでこの二つだけが本流で、それ以外は全部イレギュラーだと肝に銘じてないと、読んだ作家に片っ端から影響受けて真似したくなっては真似に失敗して時間を無駄にし続ける、というサイクルから抜け出せなくて困る。この二つに関してはある程度までうまくいった経験があるのだから、その記憶がよみがえる範囲にとどまって書く、というための目印としてこの二つをとりあえず命名して意識しておく。
とくにバロウズと残雪は読むたび絶対にものすごく真似したくなるけど、使うとすれば「無職小説」のほうに部分的に取り入れるとか、意識して制限して使わないとまず完成させるのは絶対無理だと思う。なぜ無理なのかうまく理屈がつけられないけど、とにかく経験上うまくいったことがまだない。ということは書いていてうまくいった経験を思い出すことができないということだ。今は自分には小説がたぶん書けるのだ、というささやかな自信を損なうような危険は避けたほうがいい。自分に大きなダメージを残すような代物をこれ以上書くべきではないと思う。